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2022.3.29

2022/03/29 輝く子どもたち特集②

~2021年度 学園だより 5月号より~

『すぐれた言葉の使い手になるために、言葉を考える』    小高 謙介 (5年桜組担任 国語担当)

最近話題になった言葉で「努力は必ず報われる」というものがありました。思い当たる方も多いでしょう。水泳で、東京五輪内定となった池江 璃花子選手の言葉の一節です。

2018年には、アジア大会で6冠に輝き、五輪出場,表彰台も期待されていた彼女は、翌年、白血病が判明しました。ご本人はもちろん、多くの人が悲しみ、暗い気持ちになりました。辛い闘病生活を経て、水泳に復帰し、劇的な勝利を飾り、上記の言葉を発しました。

5年生の国語の教科書に、『この言葉、あなたならどう考える』という単元があり、時機や内容としてふさわしいと判断し、取り上げました。

子どもたちの意見は分かれました。「自分も努力して報われたことがあるから、納得」。または、「自分が努力して報われなかったから納得できない」という経験から判断する意見が目立ちました。一方で、経験とは離れ、「必ず」という言葉に着目し、2位以下の人や努力が報われていない人に対しては当てはまらないのではないか、と一般に目を向けた意見も同程度、集まりました。それぞれに、「理」が通るので、どちらが正しいというのではなく、自分の意見をしっかり伝えることや相手の意見を受け止めること、また、それをするために、意見の相違を見出すことをねらいとしていましたが、それは十分に果たせたように思います。

個人的に関心を持っていたのは、「努力は必ず報われる」の「報われる」に着目した意見です。子どもたちからもいくつか出ました。「タイムなどが縮んだという感じで報われるということもあるかもしれない。」,「努力したことが他のことで役立ってきそう。」,「努力した事実が何よりもその人の報いになると思う。」などです。

子どもたちに伝えると、正誤と捉えられそうなので伝えませんでしたが、実は、池江選手は同じインタビューでこう続けています。

「正直この100(m)のバタフライは一番戻ってくるのに時間がかかると思ってた種目でもあるので、本当に優勝をねらってなかったので、でも何番でもここにいることに幸せを感じようっていうふうに思って、最後も仲間達が全力で送り出してくれて、今とても幸せです。」

この言葉を見聞きすると、「優勝」=「報い」としてよいのか立ち止まる必要を感じます。言葉の切り取り方や結び付け方で、受け手には、様々な捉え方が生まれるようです。(だから、難しいし、面白い!?)

発言一つで大きな共感や感動を呼ぶこともあれば、人を傷つけ、大切なものを失うこともありえます。言葉を上手く、正しく使えることの価値は高まるばかりです。そうなるためにも、時には、思考を行きつ戻りつしながら、じっくり考えることが大切だと思います。

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