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2021.3.31

2021/03/31 輝く子どもたち特集⑤

~2020年度 学園だより9月号より~

『学ぶことへの喜びを』  田中 智絵(5・6年家庭科担当、4年書写担当)

静かな教室。誰も遊ばない校庭。子どもの姿が見えない学校は本当にさびしい。感染症の拡大で、夏休みが伸びてしまった。熱中症の心配もあり、なかなか出かけることができず、自宅で過ごすことが多かったのではないだろうか。

こんな時こそ、ぜひ『家庭科力』を上げてほしい。『家庭科力』とは、もちろん身の回りのこと、家のことが自分でできるようになるということ。それも立派な力。でも、私が思う『家庭科力』はそれだけではない。もう一歩深めて、「なぜそうなるのか」を考えながらやってみてほしい。つまり、そこにどんな科学があるのか考えてほしい。

例えば、一学期に行った6年の家庭科の授業。どんな簡単な料理にもおいしさのひみつがある。 「冷凍庫に入れ忘れて、アイスクリームが溶けてしまったことない?」と問うと、「ない。」「そんなに都合よく、先生の思い通りの経験をしないよ。」…きっと私もこんな生意気なことを言っていたのだろう。「そのまま冷凍庫に入れて固めたら、シャリシャリになりおいしくなくなってしまいました。でも、混ぜながら冷やすことで元の食感が戻せました。なぜでしょうか。理由を考えてみましょう。」さすが学園の6年生。そこからは、空気が変わる。私は、一点を見つめ、真剣に考える子どもの表情が好きだ。「溶けて冷やすことによって、形が変わり体積が変わり、味が落ちたから。」、「下に乳脂肪分が溜まってしまうから。」どの子も自分の知識や経験を生かして考える。

アイスクリームのおいしさのひみつは、食感のやわらかさにある。アイスクリームには、空気が含まれていて、これがアイスクリームのやわらかさである。溶けると空気が抜け、カチカチに固まってしまう。また、アイスクリームは乳脂肪分が含まれており、溶けると水分と油分が分離し、水分のところがシャーベット状になり、シャリシャリの部分ができてしまう。「なぜおいしいのか」を追及していくと、そこには必ず理由がある。「どうしてそうなるのか」知ることによって、アイスクリームの味ももう一段深みが加わる。そして、他のものへの興味が湧いてくる。

私はこの夏、脳科学者である茂木健一郎さんの本を読んだ。茂木さんは、「学習はどんなに学んでも必ず次がある。一生懸命に勉強して何かを知れば知るほど、必ず次の疑問が湧いてくる。学習の本質とは、この『知のオープンエンド性の楽しさを知ることだ。』」と語っている。そして、この楽しさが「学ぶことの喜び」になり、「喜びの回路」から脳はどんどん鍛えられていくと。

学園の子どもたちには、生活が制限される今だからこそ、生活の中の小さなことに目を向け、探求し、「学ぶことへの喜び」を感じてほしいと切に願っている。もちろん、第一志望への合格も。

 

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